人間関係

コンサルタントは真面目な職業である -コルサル一筋40年が語るコンサルタントのイメージ-

プロフィール

年齢:68歳
性別:男性
職業:経営コンサルタント
趣味:落語鑑賞、カフェ巡り、居酒屋巡り

自分史

私は東京都文京区で開業医の父と、厳しくも温かい母のもとに生まれました。幼い頃から「口が達者で落ち着きがない」とよく言われていましたが、母の言葉――「準備ができていれば、何でも堂々とできる」――は私の性格形成に大きな影響を与えました。この一言が、私の人生の軸になっていると言っても過言ではありません。

中高一貫の進学校では、派手に目立つことはありませんでしたが、人前で話すことや、議論の中で論理を組み立てて相手を納得させることには自信がありました。ディベート大会では、静かに、しかし確実に相手のロジックを崩していく快感を覚え、「準備魔」と呼ばれるほど事前の情報収集や想定問答にのめり込みました。そうした中で、人の意見をよく聞くこと、相手の立場を理解することの大切さを学びました。

東京大学経済学部に進学してからは、学びの幅も広がり、「コンサルタント」という職業に出会いました。課題が明確ではないところから本質を探し出し、整理して提案していくという仕事に、強く惹かれました。経営の現場に「見えない課題」があるという事実に触れ、いつしかその「見えないものを可視化するプロ」になることが自分の目標になりました。

大学時代はディベート研究会に所属し、論理構築力と話し方を徹底的に鍛えました。アルバイトでは、居酒屋のホールで働きながら、多様な人の話を「聴く力」を養いました。居酒屋のカウンター越しで交わされる何気ない会話の中にこそ、人間の本音や感情があり、それを汲み取る力は、後のコンサルタントとしての大きな財産になりました。

社会人になってからは、経営コンサルタントとして数多くの企業に関わりました。最初の数年は、若さゆえの焦りと競争心に突き動かされ、先輩に食らいつくように仕事を覚えました。最初に一人で任されたクライアント企業で、社長から「君に出会えてよかった」と言われたとき、ようやく自分の仕事の意味を実感できたのを覚えています。

それから40年、気づけば300社以上の支援に関わり、大小さまざまな組織変革や経営改善の現場に立ち会ってきました。大手商社の組織改革に携わった際には、5年という歳月をかけて、会社の文化そのものを少しずつ変えていくという経験をしました。そこで学んだのは、「人は変わる」ためには、納得とストーリーが必要であり、結果よりも“プロセス”こそが大切だということでした。

現在は現役を退き、若手コンサルタントの育成に注力しています。自分が若い頃に先輩に教わったように、「準備を怠らず、相手の靴を履いて考える」というスタンスを、次の世代に伝えています。孫とは毎月オンラインで将棋を指しながら、「考えて動く」ことの楽しさを伝えているつもりです。

私の人生における最大の価値観は、「誠実な準備と徹底した想像力」です。目の前の課題だけでなく、その背景や人の想いまで想像して行動する。それが、誰かの背中をそっと支える力になると信じています。そして、人生の節目節目で思い出すのは、母のあの言葉です。「準備ができていれば、堂々とできる」。それが、コンサルタントとしての、いや、人としての私の信条です。

インタビュー

人生一番の成功はなんですか ?

大手商社の組織文化を5年かけて変えたプロジェクトです。最初は「ウチの会社は変わらない」とまで言われましたが、地道に対話を重ね、役員から若手までの意識を揃えたことで、全社的な風土変革に成功しました。表面的な制度変更ではなく、社員一人ひとりの行動に変化が起きた瞬間、それが「成功」だと感じました。

人生一番の成功から学んだことはなんですか ?

変革とは、計画ではなく「対話と納得」で進むということ。人は理屈で動くのではなく、腑に落ちたときに初めて動き出すものだと学びました。そして何より、コンサルタントにとって最も大切なのは、信じて待つ覚悟だということです。

人生一番の失敗はなんですか ?

若い頃、自分の提案に酔ってしまい、現場の声を無視して進めてしまったプロジェクトがあります。机上では完璧でも、現場にとっては「余計なお世話」でしかなかった。結果として、プロジェクトは頓挫し、信用を失いました。

人生一番の失敗から学んだことはなんですか ?

「正しいこと」と「受け入れられること」は違う、という教訓です。どれだけ論理的でも、相手が置かれている状況や感情を無視しては意味がありません。それ以来、私は必ず“相手の靴を履いて考える”ことを徹底するようになりました。

人生で一番大切にしている価値観はなにか ?

誠実な準備と徹底した想像力です。

なぜそれを人生の価値観と考えましたか ?

母の言葉「準備ができていれば堂々とできる」がずっと私の背中を押してくれました。そして、社会に出てからは「準備」は論理だけでなく、人の感情や背景まで想像することに広がりました。準備とは、相手のために自分を整える行為でもあるのです。

人生で一番大切にしている価値観をもった具体的なエピソードはなんですか ?

ある地方の老舗企業が経営難に陥ったとき、事業計画を提示する前に、私は1週間泊まり込んで社員一人ひとりと対話しました。その中で、社員の“誇り”が失われていることに気づきました。再建計画には数値ではなく「この会社が地元で果たしてきた役割」も織り込みました。結果、再建だけでなく、社員の士気も大きく回復しました。

これからやりたい夢や目標はなんですか ?

若いコンサルタントに「準備することの意味」を伝えていきたいです。数字の分析も、資料の体裁も大事ですが、本当に相手のことを考え抜いた“準備”の本質を教えたい。そして、どんな時代になっても“人に向き合えるコンサルタント”を育てることが私の使命だと思っています。

読者へのメッセージみなさんへのメッセージ

コンサルタントは華やかな職業ではありません。むしろ、地味で、地道な仕事です。ただ、人の悩みを聞き、人のために知恵を絞るという意味で、非常に人間らしい仕事だとも思います。どんな仕事にも“準備”と“想像力”が必要です。もし今、何かに不安を感じているなら、それは「まだ準備が足りない」というシンプルなサインかもしれません。自分自身と、相手の心に向き合うところから、すべては始まります。

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