プロフィール
年齢:29歳
性別:男性
職業:介護士
趣味:温泉めぐり
自分史
私は埼玉県川越市の団地で育ちました。両親は共働きで、母は保育士、父は工場勤務。家に誰もいない時間帯が多かった私は、祖母と過ごす時間が自然と長くなり、気づけば高齢者と触れ合うことが日常の一部になっていました。小学生の頃、祖母が認知症を患いはじめ、家族全体で介護に取り組むことになります。幼いながらも祖母の手を握ったり、一緒にテレビを見たりすることで何かの役に立てたような気がしていたあの時間は、今でも忘れられません。
人の気持ちに敏感な性格は昔から変わらず、誰かが困っていれば放っておけない。でもそのぶん、相手に寄り添いすぎて自分の心が疲れてしまうこともよくありました。中学生になって、もっと自分を変えたいと思いバスケットボール部に入りましたが、心の根っこはやはり“人と関わることにやりがいを感じる”というものでした。高校では帰宅部を選び、その分、介護ボランティアに時間を使いました。名前を覚えてくれた高齢者の方が「また来てくれたの?」と笑ってくれたことが嬉しくて、やっぱりこの道に進もうと心に決めました。
福祉系の専門学校に進み、夜勤のコンビニで学費を稼ぎながら、実習や勉強に励む毎日。おむつ交換一つにも緊張していたあの頃の自分が、今の自分の原点です。特別養護老人ホームに就職してからは、夜勤・休日出勤が続き、体力的にも精神的にもきつい時期がありました。特に新人時代は、ミスをするたびに自分を責めてしまい、「自分はこの仕事に向いていないのでは」と何度も悩みました。
でも、そんなときに先輩がさりげなく差し入れてくれた缶コーヒーが、何よりの励ましになりました。気遣いは、言葉より先に届くことがある。それを体感した瞬間でした。数年経ち、後輩から「○○さんみたいになりたい」と言われたときは、自分の存在が誰かの目標になることの重みを初めて感じました。同時に、頑張りすぎる自分の癖に気づき、“完璧を目指すより、続けられる形”を模索するようにもなりました。
今でも、祖母が亡くなる直前に私の手を握り、「ありがとう」と言ってくれたあの瞬間が、人生の一番の思い出です。あの言葉を胸に、私は今も介護の現場に立ち続けています。人を人として見ること――年齢や症状ではなく、一人の人間として向き合うこと。それが私の介護に対する、そして人生における揺るがない価値観です。
そして、そんな価値観の土台を作ってくれた母の存在を、私は心から尊敬しています。仕事も家庭も笑顔でこなす母の背中は、私にとって今も変わらない目標です。仕事はやりがいか、給料か――そんな問いに揺れながらも、今日も利用者さんの名前を呼び、そばにいることの意味を信じて、私は働き続けています。
インタビュー
人生一番の成功はなんですか ?
祖母に「ありがとう」と言ってもらえたことです。認知症が進んだ中でも、私の手を握り、しっかりと目を見て伝えてくれたあの一言は、何よりも報われた瞬間でした。
人生一番の成功から学んだことはなんですか ?
「そばにいること」そのものが、誰かの心を救う力になるということ。特別なことをしなくても、日々の積み重ねが相手の安心に繋がるのだと実感しました。
人生一番の失敗はなんですか ?
新人の頃、夜勤が続いたある日、疲れがピークで注意力が落ち、利用者さんの食事内容を間違えてしまったことがあります。幸い大事には至りませんでしたが、自分の未熟さに打ちのめされました。
人生一番の失敗から学んだことはなんですか ?
「頑張りすぎは、誰かの安心を奪ってしまうことがある」ということ。責任感を持つことは大切ですが、自分の状態を省みる余裕も、介護のプロとして必要だと気づきました。
人生で一番大切にしている価値観はなにか ?
「人を人として見ること」です。
なぜそれを人生の価値観と考えましたか ?
祖母との関係がきっかけでした。認知症が進んでも、祖母は祖母であり続ける。その“人格”に目を向けて接することが、信頼や安心につながると感じたからです。
人生で一番大切にしている価値観をもった具体的なエピソードはなんですか ?
ある利用者さんが、スタッフに怒りっぽく当たってしまう方で、正直関わるのが怖い存在でした。でも、毎日名前を呼んで挨拶をし、少しずつ話を聞いていく中で、ふと「あなたの声は落ち着く」と言ってくれたんです。それ以来、徐々に笑顔が見られるようになりました。表面的な言動だけで判断せず、その人自身を見ることの大切さを改めて実感しました。
これからやりたい夢や目標はなんですか ?
自分自身が「燃え尽きない介護士」でいること。そして、後輩や仲間にも無理なく続けられる介護のあり方を伝えていきたいです。いずれは、地域で介護職を目指す若者に向けた講座やサポート活動にも関わりたいと考えています。
読者へのメッセージみなさんへのメッセージ
介護は大変な仕事だとよく言われます。確かにそうです。でもその中に、人と人が真っ直ぐ向き合える尊さがあります。たとえ言葉が通じなくても、手を握ることで伝わる想いがある。そんな瞬間が、日々の中にたくさんあります。誰かを支えることで、自分もまた支えられている。そんなふうに感じながら、これからも私はこの仕事を続けていきます。どんな仕事も、選んだその先に意味が生まれる。そう信じています。