人間関係

旅館に送られて変わった人生 -不良から東京の料理長へ-

プロフィール

年齢:41歳
性別:男性
職業:日本料理店のオーナー兼料理長
趣味:お客さんとの飲み歩き、ゴルフ、競馬など

自分史

山形県米沢市の住宅街で、自営業の父とパート勤務の母のもと、三兄弟の次男として生まれました。幼い頃から落ち着きがなく、兄弟や近所の友達とケンカばかり。勉強なんてそっちのけで、悪さをしては母に怒られる日々を過ごしていました。特に忘れられないのは、小学生のときに駄菓子屋で万引きをして母にこっぴどく叱られたこと。あのときの情けなさと申し訳なさは、今でも胸の奥に残っています。

中学生になると、やんちゃはさらに加速し、ついには警察にお世話になるような出来事もありました。夜中に仲間と原付を乗り回して補導された日、厳しく指導してくれた警察官が今では実家に顔を出してくれるような関係になっているというのも、人生の面白さだと思います。当時は反発心ばかりで、誰の言葉にも耳を貸さなかった自分ですが、心のどこかで「このままじゃ終わりたくない」と思っていたのかもしれません。

高校には進学しましたが、すぐに辞めてしまいました。そんな折、父の知人が営む旅館に「更生のためだ」と無理やり送られたことが、人生の大きな転機となります。最初は反発しかありませんでしたが、厨房で包丁を握るうちに、自分の中に眠っていた集中力や探究心が目を覚ましはじめました。初めて自分が作った料理をお客さんが「美味しい」と言ってくれた日のことは、一生忘れません。

その旅館で出会った仲居の女性――今の妻が、どんなときも支えてくれたことも、自分が踏ん張れた理由のひとつです。やがて東京に出て、本格的な修業が始まりました。職人気質の料理長のもとで鍛えられ、「お前、伸びるぞ」と言われたとき、自分にも誰かの役に立てる道があるんだと胸が熱くなったのを覚えています。20代で料理長に抜擢された後も、努力を惜しまず、腕を磨き続けました。

現在は恵比寿で日本料理店を営み、自ら料理長を務めながら、居酒屋のオーナーとしても日々忙しく働いています。お客さんとの飲み歩きや、たまのゴルフや競馬も、今では大事な息抜きです。そして何より、家族との時間が一番の癒しです。息子が「パパみたいになりたい」と言ってくれたときは、本当にこの道を歩んできてよかったと心から思いました。

不器用で、遠回りばかりしてきた人生ですが、だからこそ「恩返し」と「筋を通すこと」の大切さを知ることができました。信じてくれた人の期待に応える――それが、今の自分を形作る根っこになっています。これからも、料理を通じて人の心を温めることができるよう、真っ直ぐに、丁寧に、日々を重ねていきたいと思っています。

インタビュー

人生一番の成功はなんですか ?

やっぱり、自分の店を東京・恵比寿に構えて、料理長として続けられていることです。何もなかった自分が、包丁ひとつで信頼を得て、家族を養っている――それが一番の誇りです。

人生一番の成功から学んだことはなんですか ?

「信じてくれた人の期待は、絶対に裏切るな」ってことですね。板長や妻、旅館の仲間が自分を信じてくれたから今があります。人の思いに応える努力を続ければ、道は拓けるということを学びました。

人生一番の失敗はなんですか ?

若い頃のやんちゃですね。警察沙汰になったり、親に心配ばかりかけて、高校もすぐ辞めてしまった。あの頃は、自分のことしか考えてませんでした。

人生一番の失敗から学んだことはなんですか ?

「失った信頼は簡単には戻らない」ってこと。でも、誠意を持って生き直せば、時間はかかっても人はまた認めてくれる。それもまた、人の温かさだと知りました。

人生で一番大切にしている価値観はなにか ?

「恩返し」と「筋を通すこと」です。自分一人でここまで来たわけじゃない。だから、支えてくれた人にちゃんと返す。そして、自分の中の筋だけは絶対に曲げない。これが自分の軸です。

なぜそれを人生の価値観と考えましたか ?

過去に何度も人に迷惑をかけて、信頼を取り戻すために必死になったからこそ、この価値観に辿り着きました。信頼は財産だし、筋を通さないと人からも神様からも見放される。それを肌で感じてきたからです。

人生で一番大切にしている価値観をもった具体的なエピソードはなんですか ?

店を出すとき、古巣の料理屋から引き抜きの話がありました。でも、その時支えてくれていた仲間や仕入先との信頼を裏切りたくなかった。だから断って、ゼロから自分の店を作ったんです。回り道だったかもしれないけど、あのとき「筋を通す」選択をして本当によかったと思ってます。

これからやりたい夢や目標はなんですか ?

地方に、料理人のたまごたちが修行できる「小さな宿付き料理塾」みたいな場所を作りたいです。かつての自分のような若者に、人生をやり直せる場所を提供したい。料理が人を変えるって、自分が一番知ってるので。

読者へのメッセージみなさんへのメッセージ

どんなに荒れた道を歩いてきても、変わることはできます。大切なのは「誰かのために頑張る」って気持ちを持てるかどうか。それが見つかったら、人は強くなれる。もし今、道に迷っている人がいたら、安心してください。人生はいつでも、やり直せます。

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